温度制御について勉強しよう
Let's study temperature control
温度は工業計測と制御においてもっとも広く利用されています。私たちの日常生活においても食事の準備には温度が重要なファクタになりますし、人間が生きて行くために絶対的に必要な『空気』と『水』についても温度が一番大切な要素であることは容易に理解できますネ。三基計装株式会社は人間、動物、植物、機械にとって、清浄で快適な空気環境を作ることを仕事にしています。したがって温度制御は必須の技術です。この分野は100年前に勉強したことが今でも通用する世界ですが、理論はともかく制御手段としては大変進歩しました。10年ひと昔ですから、30年も前の温度制御の手段は、今から考えれば回路的には複雑で、今から見れば「よくもまあ、こんな凝ったことをしたものだ」と思われるものでした。マイコ� �の登場で制御器もガラリと変わったのです。しかし何事もまず理論を理解することが大事であり、以下勉強してみましょう。
1.制御系統図(Control system diagram)
図1. 温度の自動制御 | たとえば食材を煮炊きするときには最初目一杯加熱して、沸騰してきたら状態を見ながら火加減を手で調節します。このときのセンサは「目」であり、「におい」であり、アクチュエータは人の手を通してガスや油ならバルブコック、薪ならばくべる量になります。人間は過去の経験を学習して頭脳の中に蓄えており、こうなったらこうすれば良いということを知識として持っています。ただし人間には初心者もいればベテランもおり、結果うまく行く場合とそうでない場合が起き得ます。また基本的にこのような「手動制御」では付きっきりで制御しなければなりません。加熱調理の間中、他の事もしないでずっとそればかりやっているのは人間のような「疲れる」「飽きる」特性を持った動物には大変ですね? この部分を 機械に任せられたらどんなに楽でしょうか? そこで左図の「調節計」というものが活躍します。つまりこれで「自動制御」ができるといういうわけです。この制御系統図の各用語は下記の通りです。 SV : 設定値(目標値)Set Variable PV : 測定値 Process Variable MV : 操作量(出力) Manipulative Variable TIC : 温度指示調節計(Temperature indicating controller) SSR : Solid state relay (actuator) 自動制御とはSVとPVの偏差e(Deviation)をゼロにするように、様々なアルゴリズムを用いてMVを演算して調節出力することを言います。 |
古い旋盤の部品を購入する場所
制御ブロック図はここでは割愛しますが、通常の温度制御では偏差eを常に見ながらMVを加減します。このように操作した効果を測定して次はどうすべきか?と考えて制御する方法を『フィードバック(Feedback=帰還)制御』と言います。しかし、たとえば水と空気を考えてみると、水を加熱するほうが空気を加熱するより早く結果が出ます。金属ならもっと早いでしょう。これは物質の密度と関係するのでしょうが、制御したい対象によって、制御出力の影響が早く現れる場合と遅い場合があります。したがって「フィードバック制御」においては制御対象の特性に適した方法をとらないと良い制御はできません。
2.良い制御(Good control)を行うには
図2. オンオフ制御 |
図3. 比例制御の応答特性 |
図2に示すように、たとえば空調された室内に温度記録計を置いたら、ある温度±2℃の幅で上下動の繰り返しが記録されたとします。これを以って制御が悪いと言うお客様がいらっしゃいますが、果たしてそうでしょうか?このような波動を『ハンチング』と呼びますが、きれいに目標値の上下でハンチングしているとしたらそれは「良い制御」と言えるかもしれません。少なくとも暴れてはおりません。制御アルゴリズムが『2位置制御』のパッケージエアコンが設置されていたとしたら、ヒータや冷凍機のオンオフ制御を行いますから常に偏差はプラスとマイナスの間を往来するのです。
実際には2位置制御だからハンチングしているのではなく、冷凍機を一旦停止しますと、圧縮機(Compressor)を中心とする冷凍サイクルというのは長い配管の中に冷媒があって、これの蒸発(気化)、圧縮、凝縮(液化)というサイクルを繰り返しているため、停止してすぐ起動すると圧縮機が壊れてしまうことを防止するタイマが入っているためです。冷凍機を常時運転して加熱冷却する方式だとハンチングを軽減できますが、省エネに反する面があります。
ここに『比例制御』という制御アルゴリズムを入れ、適切な比例感度を設定しますと図3のような制御結果になります。ヨーイドンで制御スタートしたとき、もしくは目標値を変えたとき、いかに素早く応答するか、これを『速応性(Responsibility)』と呼びます。目標値を行き過ぎて、オットット、こりゃいけねぇと修正動作をかけるのですがPVはどうしても行き過ぎてしまう、これを『オーバーシュート』と言います。そして今度は逆方向に行き過ぎてハンチングしますが、このピーク値がだんだん下がり、やがて安定します。オーバーシュート〜ハンチングの状態を『過渡状態(Transitional state) 』と言い、これがおさまって安定した状態を『定常状態(Well-balanced state) 』と言います。過渡状態から定常状態に移行して、安定状態に入ることを『安定性(Stability)』と呼びます。
良い制御とは暴れない制御であり、そういう意味から� width="597" height="377"/>
[2位置制御動作(上),制御結果(下)]
[GAP付2位置制御動作(上),制御結果(下)]
どのような製品がオンタリオ州で知られています
図4.2位置制御動作、ギャップ付2位置制御動作と制御結果
3−2.PID制御(PID control action)
「PID制御」というのは難しいとお考えの方が多いでしょう。実際、簡単ではありません。人間が何か実行の判断を迫られたとき、過去の経験に照らしてどうすべきか?現在の状態が続くならどう判断すべきか?将来はどうなるかの予測という「過去」、「現在」、「未来」における情報にそれぞれ重みを付けて判断します。PID制御においては、Pが現在の偏差の比例分、Iが過去の偏差の累積値、Dが偏差の将来予測値に基づいて制御出力を判断しているので、人間もPIDを適切に重み付けできる人は適切な判断ができる人ということになります。余談になりますが、人間でも今起きたことに直ちに反応して右往左往しているP型人間、過去のことはとてもよく 知っているが将来どうすべきかの判断が弱いI型人間、今起きた変化に過敏に反応して将来予測を立てることは得意だが整理が不得手なD型人間など、様々な人がいます。このように考えますと、少しは「PID制御」に親しみが持てたのではないでしょうか(^_^)
a)比例動作(Proportional action)
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図5.比例制御動作 |
比例制御を行ったとき安定状態に入っても定常偏差(Offset)が残ります。逆に言いますと基本的に偏差があるから制御しているわけです。
b)積分動作(Integral action)
Y=KI∫Zdt KI:積分動作定数=Kp /TI TI:積分時間 TI=∞(≒0):積分動作無 積分時間小→積分動作強(出力変化率大) ナットフライヤー英国を行う ※温度制御のプロである弊社の親会社の人が言いました。『愛(I)は短いほど強い』、これは名言です。積分時間が短いと積分動作は強くなります。 | |
図6.積分制御動作 |
比例制御による定常偏差(Offset)をリセットするには、これを積分して修正をかけます。
c)微分動作(Derivative action)
Y=KD・dZ/dt KD:微分動作定数=Kp ・TD TD:微分時間 TD=0:微分動作無 微分時間大→微分動作強(出力大) | |
図7.微分制御動作 |
d)比例+積分動作(PI action)
Y=Kp・Z+KI∫Zdt =(100/P)・(Z+(1/TI)∫Zdt) TI:積分時間 P:比例帯(0〜100%)
※実際の制御では出力を出しているのに偏差が右図のように変わらないということはありません。あくまでわかり易いように制御出力が偏差に影響しないように書いてあるだけです。 | |
図8.比例+積分制御動作 |
比例帯幅が狭い=比例感度が大きい、すなわちY=Kp・Z+bという1次式における勾配がきついので、すこしの偏差でも制御出力が敏感に動きます。するとどうしても制御結果は振動しがちになります。広ければ振動は少なくなりますが動きが鈍くなります。
ここに積分動作を加えますと、振動を抑えるとともに安定状態での定常偏差を除去することができます。積分動作を強くすると修正動作が強くなりますので偏差減少速度は速くなりますが、ハンチングが残ることがあります。この状態から積分動作を弱くして行くと目標に向かってソフトランディングが可能となります。応答の速い、無駄時間の少ないプロセス制御ではこのPI制御が多く用いられます。ただし、応答の遅い、無駄時間の大きい大空間空調制御では 、比例帯の幅を大きくとり、すなわち比例感度を小さく(偏差に対して鈍く)とり、積分時間も長くとったPI制御が普通です。下の図では右上の方法です。
図9.比例+積分制御動作
e)比例+微分動作(PD action)
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図10.比例+微分制御動作 |
図11.外乱に対する微分制御による修正動作
微分制御は先読み制御なので、系の応答が遅いプロセスに有効です。
f)比例+積分+微分動作(PID action)
Y=Kp・Z+KI∫Zdt+KD・dZ/dt
=(100/P)(Z+(1/TI)∫Zdt+TD(dZ/dt ))
TI:積分時間 TD:微分時間 P:比例帯(0〜100%)
図12.比例動作、+積分動作、+微分動作による修正動作
以上の説明でなんとなくPID制御というものが良いらしいということはお分かりになったと思います。では、具体的にP、I、Dの定数はどのように設定すれば良いのでしょうか?これについて語ると本になるので割愛します。ただ、現在では調節計に『PIDオートチューニング機能』というものが付いているので、お任せしても大概大丈夫です。良かったですね(^_^) ただ、ギリギリ制御の応答性、安定性を極めたいという向きにはP、I、Dの定数チューニングを理解してもらわなければなりません。
また、PID制御のようなジタバタ、アクセクする制御ではなく、省エネで外乱応答性の良い「ザゼンソウ制御」というものもご紹介しております→クリック
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